吸収合併とは、合併当時法人の一部が合併後も存続し、合併により消滅する医療法人の権利義務のすべてを合併後存続する医療法人に承継させることをいいます。合併により消滅する医療法人のことを「吸収合併消滅医療法人」といい、合併後存続する医療法人のことを「吸収合併存続医療法人」といいます。
持分のある医療法人と持分のない医療法人いずれも、吸収合併することは可能です。ただし、持分のある医療法人を吸収合併存続医療法人としたい場合は、持分のある医療法人同士の吸収合併しかありません。それ以外は、吸収合併存続医療法人は、持分のない医療法人となります。
また社団医療法人と財団医療法人の吸収合併も可能です。この場合、吸収合併存続医療法人は、どちらか選択した方になります。社団医療法人を選択した場合、持分のない医療法人となります。
吸収合併を行うには、吸収合併存続医療法人と吸収合併消滅医療法人との間で、吸収合併契約の締結を行います。
吸収合併契約には、
① 吸収合併存続医療法人及び吸収合併消滅医療法人の名称及び主たる事務所
② 吸収合併存続医療法人の吸収合併後2年間の事業計画又はその要旨
③ 吸収合併がその効力を生ずる日
を定めなくてはいけません。
社団医療法人が吸収合併をする場合、当該医療法人の総社員の同意が必要になります。合併は当該医療法人にとって重要な行為なので、定款でその要件を緩和することはできません。
財団医療法人が吸収合併をする場合は、まず寄附行為に吸収合併をすることができる旨の定めが必要になります。そして、寄附行為に別段の定めがない限り、理事の3分の2以上の同意が必要です。また寄附行為に定めがある場合は、評議員会の承認決議が必要になります。厚生労働省のモデル定款では、理事及び評議員のそれぞれ3分の2以上の同意が必要となっています。
吸収合併は、吸収合併存続医療法人の主たる事務所の所在地の都道府県知事の認可が必要です。
吸収合併の認可を受けるには、申請書と次の書類を都道府県知事に提出しなければいけません。
① 理由書
② 社団医療法人は社員総会議事録、財団医療法人については、理事会(評議員会)の議事録
③ 吸収合併契約書の写し
④ 吸収合併後の吸収合併存続医療法人の定款又は寄附行為
⑤ 吸収合併前の吸収合併存続医療法人及び吸収合併消滅医療法人の定款又は寄附行為
⑥ 吸収合併前の吸収合併存続医療法人及び吸収合併消滅医療法人の財産目録及び貸借対照表
⑦ 吸収合併後2年間の事業計画及びこれに伴う予算書
⑧ 新たに就任する役員の就任承諾書及び履歴書
⑨ 開設しようとする病院、診療所又は介護老人保健施設の管理者となるべき者の氏名を記載した書面
医療法人は、都道府県知事の吸収合併の認可があったときは、その認可の通知があった日から2週間以内に、その時点における財産目録及び貸借対照表を作成しなければなりません。
医療法人は、吸収合併の認可の通知のあった日から2週間以内に、その債権者に対して異議があれば一定の期間内に述べるべき旨を公告し、かつ、判明している債権者に対しては、各別に催告しなければいけません。一定の期間は2か月以上としなければいけません。
吸収合併存続医療法人は、吸収合併存続医療法人の主たる事務所の所在地において、吸収合併による変更の登記を、吸収合併消滅医療法人においては、解散の登記を申請します。
医療法人の吸収合併は登記をすることによって効力が生じます。
主たるの所在地におけるこれらの申請は、当該法務局の管轄区域内に吸収合併存続医療法人の主たる事務所がないときは、その主たる事務所の所在地を管轄する法務局を経由して、同時に申請しなければいけません。
吸収合併消滅医療法人は、吸収合併に必要な手続きが終了した日から、2週間以内に主たる事務所の所在地を管轄する法務局に吸収合併による解散の登記を申請しなければいけません。この解散登記は、変更登記とあわせて申請しなければいけません。
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