「社長の相続」と「一般の相続」の違い

  「社長の相続」と「一般の相続」は、ともに個人(社長)が死亡することによって、財産を家族が引き継ぐという意味では同じですが、その内容は大きく異なります。

 「社長の相続」では個人の財産だけでなく、会社の経営権や従業員、取引先への影響など、多くの要素が複雑に絡み合います。

相続する財産について

一般の相続

 一般の相続において、個人が持っていた財産が相続の対象になります。

 プラスの財産では、現金預金、不動産(土地や建物)、株式や投資信託、自動車や宝飾品等の動産などが対象になります。

 マイナスの財産では、住宅ローンなどの借金、未払いの税金、医療費などが対象になります。

社長の相続

 社長の相続では、一般の相続における相続財産のほかに

 ・自社株

 ・事業用資産の権利

 ・会社の債務の連帯保証

 ・役員借入金、貸付金

 ・経営に関する知的財産(ノウハウ、ネットワークなど)

などが相続の対象になります。社長の相続は、一般の相続と異なり、単なる遺産の分配にとどまらず、会社の存続や発展に直結する重要なプロセスですので、専門的な知識と事前の計画が不可欠です。

社長の相続特有の財産

 社長個人の相続財産であり、会社を経営することにより有することとなる特有の財産について次のようなものがあります。

自社株

 中小企業の株というのは、あまり売買されることはないので、創業社長であれば、会社の株(自社株)の大半を社長が所有していることが多いでしょう。

 株(自社株)は、会社の所有を表すものであり、その価格は、会社の価値となります。会社の業績がよい会社は、自社株評価が高くなります。

事業用資産の権利

 会社で使用している事業用の資産について、会社名義のものは社長の相続財産とはなりませんが、社長個人の資産を会社に貸していれば相続の対象になります。

 会社に対して、無償で貸していれば、使用貸主の地位を、有償で貸していれば、賃貸人の地位が相続財産となります。

会社の債務の連帯保証

 会社は事業活動をするうえで、銀行などから借入れをすることがあります。そして、会社の借入金について社長が個人で連帯保証人になっているケースは多いです。

 会社の債務は社長個人の相続財産ではありませんが、連帯保証人の地位は相続の対象になります。

役員借入金、貸付金

 役員借入金・貸付金は、会社と社長個人の間のお金のやり取りを示すものです。会社に資金が不足するときに社長のポケットマネーを会社に入れることは珍しいことではありません。

 ただし、社長相続時には、財産や債務として計上されるため慎重な対応が求められます。

経営に関する知的財産

 会社の経営に欠かせない「知的財産」も相続の対象になります。知的財産とは、特許権、商標権等社長個人が権利者のものや営業秘密・ノウハウなども含まれます。

 知的財産は会社の競争力やブランド価値をさせる資産であるため、適切な管理が必要です。

相続の影響範囲の違い

 社長の相続と一般の相続の大きな違いのひとつが、「相続の影響範囲の広さ」です。一般の相続は主に個人の財産や家族への影響にとどまるのに対し、社長の相続は、個人の財産や家族への影響だけでなく、会社の存続と経営に直結するため、関係者も多く問題が複雑化しやすいのが特徴です。

 社長の相続が及ぼす影響範囲として

家族への影響

 社長の個人財産には、自社株や事業用資産など評価が高額になることが多く、相続財産の分割問題や、相続税の負担など、家族への影響があります。

 また社長の収入で家族の生活費を支えていた場合は、生活水準の低下リスクも考えられます。

会社への影響

 まずは、社長が所有する自社株をどのように分割するかによって、後継者の経営権が不安定になることもあります。

 また社長のリーダーシップによる経営がされていた会社では、対従業員との関係では、後継者不在や経営方針の不透明さからの不安の助長ということが考えられます。対取引先や金融機関では、信用の低下による条件の変更や見直しを求められるリスクもあります。

相続の対策の違い

 相続対策は、社長の相続でも一般の相続でも重要な課題ですが、違いとしては対策の内容の優先順位が異なります。

 一般の相続では、財産の分割や相続税の負担の軽減などが主な課題ですが、社長の相続では、経営権の承継や従業員、取引先への影響を考慮した対策が求められます。

社長の相続の場合

経営を安定させるための株式対策

 社長の自社株を多く保有している場合、相続時に株式が分散すると経営の意思決定が困難になります。そこで、生前に株式を集約させるための方法として、生前贈与や法人での株式の所有、従業員持株会の活用などが考えられます。生前に集約が難しい場合は、遺言や事業承継信託を活用し、対策を行うことが有効です。

➡社長の相続と民事信託について

事業承継計画の策定

 社長の相続では、後継者が経営者がスムーズに引き継ぐために、事業承継計画を事前に策定することが重要です。

 計画の内容としては、後継者の選定と育成について、取引先や金融機関への周知、従業員への説明などが必要になってきます。

相続税の対策

 社長の相続では、自社株評価が高額になることが多いため多額の相続税が発生するリスクがあります。多額の相続税の負担が会社経営に与える影響を軽減できるよう、生前から対策を行うことが必要です。

 生命保険の活用や、自社株評価の見直しなど事前に準備をしておくことが重要です。

役員貸付金・借入金の整理

 会社が社長に貸し付けている「役員貸付金」も相続の対象になるので、その額が高額だと相続人に対して大きな負担となります。また「役員借入金」についてもその額が高額だと「相続税」について大きな負担になります。

 生前から相続時のことを考慮し、役員報酬の減額や繰越欠損金の利用など事前に対策をしておくことが重要です。

借入金の保証人対策

 社長が事業していくなかで、借入をするために連帯保証をすることは仕方ない面があり、生前に連帯保証を外すことも難しいことが多いでしょう。

 生前から相続時のことを考慮し、生命保険の活用や後継者への保証人の変更等を検討することが重要です。

一般の相続の場合

遺言書の作成

 相続人間の争いを防ぐために、遺言書を作成し、明確に財産の帰属先や、家族に対する想いなどを伝えることが重要です。

 遺言書がないと、残した財産について、その分割については相続人全員で話し合うことが必要なため、うまく纏まらないリスクがあります。

生命保険の活用

 生命保険をうまく活用することによって、相続人間の争いを防ぐことができます。また相続税の節税、納税資金としても利用できますので便利です。

 個人の相続だけなく、会社の相続も含む社長の相続では、生命保険は特に有効であり、生前に対策をすることは必須といえます。

生前贈与の活用

 生前に贈与を行うことによって、相続時の税負担を軽減させます。年間110万円の基礎控除を利用し、長期的な贈与を行います。また相続時精算課税制度を使い、大きな財産の移転も可能です。

 生前贈与により、相続時の税負担の軽減という効果だけでなく、特定の人に財産を残すことができるというメリットもありますので、早い段階から始めることが有効です。

不動産の相続対策

 不動産は相続財産の中でも評価額が高いため、相続税の負担が大きくなりやすい資産です。相続時の税負担を軽減するために、小規模宅地等の特例を活用したり、貸家建付地を活用すると税負担は大きく変わります。

 また相続財産に占める不動産の割合が高い場合、相続人間の公平感を保つために、生命保険を活用するなどの対策も必要です。

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 有限会社とは、以前設立が認められていた形態で有限会社法を根拠に設立させた会社のこと。現在は設立できません。

 合同会社とは、原則として出資者と経営者が同じで、所有と経営が一体化している会社のこと。出資者は株式会社と同様出資した限度で責任を負います。

 合資会社とは、有限責任社員と無限責任社員の2種類の社員が存在する会社のこと。

 合名会社とは、無限責任社員のみによって構成される会社のこと。社員全員が会社債務について直接無限の責任を負います。

 一般社団法人とは、人が集まった組織体で、剰余金の配当を行うことを目的としない法人のこと。

 一般財団法人とは、財産の集まりに対して法人格を与えられた団体のこと。一般社団法人と同じく剰余金の配当を目的としません。

 特定非営利活動法人とは、ボランティア活動などを行う団体で法人格が付与された法人のこと。

 医療法人とは、病院、医院や歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設することを目的として設立された法人のこと。

 宗教法人とは、教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを目的とした団体のこと。都道府県知事若しくは文部科学大臣の認証が必要です。

 学校法人とは、私立学校の設置を目的として設立される法人のこと。都道府県知事若しくは文部科学大臣の認可が必要です。

 社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法の定めるところにより設立された法人のこと。

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