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解散清算に類似する手続きとして、「特別清算」という清算手続きがあります。
特別清算とは、解散して清算手続きが行われている解散会社において、
① 清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があること。
② 債務超過の疑いがあること。
がある場合に申立によって裁判所の命令によって開始される清算手続きのことをいいます。
①は債権者や株主などが多数おり、その利害関係が複雑な場合や財産関係などが複雑な場合などが考えられます。
②は実際に債務超過が明らかである場合はもちろん、疑うに足る程度の財産的状態にある場合のことです。
特別清算は、清算人が行う清算手続きについては、裁判所の監督のもと行われることが通常の清算との違いとなります。
特別清算は株式会社のみが手続きの対象になります。特例有限会社や他の法人は特別清算を利用することはできません。
特別清算開始の要件の一つが、清算の遂行に著しい支障を来すべき事情がある場合です。
たとえば、債権者が多数存在する場合や会社の債権債務関係が複雑で処理に時間を要する場合などです。
株主や債権者に不利益が及ばないよう裁判所の監督のもと手続を進めたほうがよいとの理由からです。
次に債務超過の疑いがある場合も特別清算開始の要件の一つです。また債務超過の疑いの場合は、清算人には、特別清算の申立義務があります。解散清算手続きを開始して、清算途中で債務超過の疑れる場合には、裁判所を関与させ、清算手続きの厳格化、公正性を保つことが必要となるからです。
特別清算の申立は、下記の者がすることができます。
1.債権者
・会社の債権者は申立をすることができます。会社更生手続きのような債権額につき金額的な要件はありません。
2.清算人
・清算株式会社の代表者である清算人にも申立権があります。また清算株式会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人は特別清算の申立をする義務があります。
3.監査役
・会社は解散したときは、取締役は退任しますが、監査役は必ずしも退任するとは限りません。清算中の会社に監査役がいる場合、監査役にも特別清算の申立権があります。
4.株主
・会社の株主にも特別清算の申立権があります。上記債権者と同じように株式数での要件はありません。
特別清算が開始されても、清算事務を遂行するのは、清算人です。ただし、特別清算における清算人は、会社から選ばれた清算人という立場ではなく、裁判所から選ばれた清算人という立場となるため、債権者や株主に対して、より公平・誠実に清算事務を行う義務を負います。
裁判所は、清算人が清算事務を適切に行っていない場合は、解任することができます。また必要がある場合は追加で清算人を選任することもできます。
特別清算の申立がされた場合、特別清算開始の原因となる事由があるときは、特別清算開始の命令をします。ただし、次の場合はこの限りではありません。
1 特別清算の手続きの費用の予納がない場合
→ 特別清算開始の申立をするときは、手続きの費用として裁判所の定める金額を予納しなければいけません。具体的な金額は、事案によって異なりますが、協定型が5万円、和解型が約8千円とされています。
2 特別清算によっても清算を結了する見込みがないことが明らかである場合
→ 特別清算開始の申立段階から、清算を結了する見込みがないのであれば、破産手続きでよるべきであるためです。
3 特別清算によることが債権者の一般の利益に反することが明らかである場合
→ 債権者の一般の利益に反するとは、破産手続きと特別清算手続きを比較し、破産手続きにより得られる配当よりも少ない配当しか得られない場合をいいます。
4 不当な目的で特別清算開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでない場合
→ 特別清算の目的が、資産隠しや、特別清算とは無関係な他の目的のためにされた場合をいいます。
特別清算が開始された場合、清算事務については、裁判所の監督に属します。通常の清算では裁判所の監督が行われません。また裁判所は、いつでも解散会社に対して、清算事務及び財産の状況の報告を命じ、その他清算の監督上必要な調査をすることができます。
裁判所は、特別清算開始後において清算株式会社の財産状況を考慮して必要と認めるときは、下記の事項について、調査委員による調査を命ずる処分をすることができます。
①特別清算開始に至った事情
②清算株式会社の業務及び財産の状況
③清算株式会社の財産に関する保全処分をする必要があるかどうか
④役員等の財産に関する保全処分をする必要があるかどうか
⑤役員等責任査定決定に規定する役員等責任査定決定をする必要があるかどうか
⑥その他特別清算に必要な事項で裁判所の指定するもの
裁判所は、監督委員を選任し、下記の裁判所の許可に代わる同意をする権限を付与することができます。
1 財産の処分
2 借財
3 訴えの提起
4 和解又は仲裁合意
5 権利の放棄
6 その他裁判所の指定する行為
清算人が行う上記の重要行為については、原則として裁判所の許可を得なければならないが、監督委員にその許可に代わる同意の権限を与えることができます。
監督委員は、上記の同意権限を行使する前提として、いつでも清算株式会社の清算人及び監査役並びに支配人その他の使用人に対して、事業の報告を求め、又は清算株式会社の業務及び財産の状況を調査することができます。
特別清算開始の命令があった場合は、清算株式会社は下記の行為をするには裁判所の許可が必要です。
1 財産の処分
2 借財
3 訴えの提起
4 和解又は仲裁合意
5 権利の放棄
6 その他裁判所が指定する行為
7 事業の全部の譲渡
8 事業の重要な一部(譲渡資産の帳簿価額が総資産額の5分の1を超えるもの)の譲渡
上記1〜6については、裁判所の許可に代わり、監督委員の同意の権限を与えることができます。ただし、上記1〜5について
① 低価額のもの
② 裁判所が許可を不要としたもの
については、裁判所の許可は不要となります。低価額とは、100万円を超えないものをいいます。
また、上記7、8については、行為の重要性が高いことから、必ず裁判所の許可がいることとし、監督委員の同意の権限を与えることはできません。
また債務の弁済については、清算株式会社は、協定債権者に対してその債権額の割合に応じて弁済をしなければなりません。ただし、裁判所の許可を得て少額の協定債権、清算株式会社の財産につき存する担保権によって担保される協定債権その他これを弁済しても他の債権者を害するおそれがない協定債権に係る債務については、債権の額の割合を超えて弁済することができます。
債権者集会とは、総債権者が参加することができる債権者の利益を特別清算手続きに反映させる会議体のことをいいます。
債権者集会には、
① 清算人からの調査結果等の報告のための債権者集会
② 協定案の決議のための債権者集会
③ その他の債権者集会
があります。債権者集会は、清算株式会社が招集するのが原則ですが、協定債権の総額の10分の1に当たる協定債権を有する協定債権者は、債権者集会の招集を請求することができます。
債権者集会は、裁判所が指揮すると定められています。債権者集会も裁判所で行われます。実際に準備するのは、清算株式会社であり、債権者集会の招集に関する決定事項、協定債権者の議決権の行使の許否及びその額については、裁判所に届け出なければなりません。
債権者集会において、決議事項を可決するためには、
① 出席した議決権者の過半数の同意
② 出席した議決権者の議決権の総額の2分の1を超える議決権を有するものの同意
の両方の同意が必要です。
協定とは、特別清算において清算手続きを遂行するための債権者と清算株式会社との間の債務処理についての取り決めのことをいいます。
協定においては、協定債権者の権利の全部又は一部の変更に関する条項を定めなければなりません。特別清算中においては、債務の減免等は当然のことであり権利変更の基準を定めることにより、清算手続きを進めることができます。基本的に協定債権者の間では、権利変更の内容は平等でなけれればなりません。
債権者集会において協定を可決するには、
① 出席した議決権者の過半数の同意
② 議決権者の議決権の総額の3分の2以上の議決権を有する者の同意
の両方が必要です。協定は債権者にとって最重要事項であるため、通常の決議要件よりも加重されています。
また協定が可決された場合は、清算株式会社が可決された協定につき認可の申立てをします。裁判所がこれを認可することにより、協定債権者の権利変更が生じ、これに従った弁済をすることになります。
特別清算開始の命令があったとき、特別清算開始の命令を取り消す決定が確定したとき又は特別清算終結の決定が確定したときは、本店所在地を管轄する登記所にその登記をしなければいけません。ただし、これらの登記は清算株式会社の申請によるのではなく、裁判所書記官が職権で登記をします。
特別清算開始前の解散や清算人就任の登記については、清算株式会社からの申請となります。
なお、特別清算開始後に裁判所により清算人が選ばれた場合は、裁判所書記官が嘱託でするのではなく清算株式会社からの申請が必要です。
裁判所による特別清算終結の決定が確定したときは、裁判所書記官は、本店の所在地を管轄する登記所に特別清算終結の登記をします。当該登記をすることにより、清算株式会社の登記記録は閉鎖されます。
裁判所は、特別清算開始後、
1 特別清算が結了したとき
2 特別清算の必要がなくなったとき
は、特別清算終結の決定をします。
会社債務を弁済した場合や協定の実行が完了した場合などで特別清算は終了します。
通常清算への移行や会社継続となった場合など、特別清算の必要がなくなった場合も終了することになります。
特別清算は債務超過の状態では終了することはできませんので、超過分についての債務免除がもらえなければ破産手続きに移行することになります。
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