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社長(代表取締役)の相続

  会社の社長(代表取締役)が亡くなった場合、会社はどうなってしまうのでしょう。

 会社の社長が亡くなっても、それをもって会社自体が解散することはありません。会社の社長が亡くなることは会社の解散事由ではないからです。

 会社の中から又は外部から新しい社長となる人を連れてきて、新しい社長のもと再出発して活動をしていくのが通常です。

 しかし、実質一人で会社を経営されている中小企業の場合で、後継者がいないようなケースでは、会社を解散させるという選択肢が出てきます。

 手続きをするのは、残された家族の方です。

 今までまったく関わってこなかった親の会社の処理をするのは、非常に大変です。

 会社をそのまま継続するのか、解散させるのか。

 残された家族が選択することになります。

社長(代表取締役)に相続が発生した場合は

 社長(代表取締役)が亡くなった場合に、会社の行く末として、いくつかの選択肢があります。

親族(後継者)が引き継ぐ

 会社を代表取締役する社長が亡くなってしまった場合、新たに社長を選んで会社を継続させていくという選択肢です。

 社長の子息など親族にいずれ事業を承継することを予定していた会社や、社長の死を機に引き継ぐことを決断する場合などです。

従業員等会社関係者が引き継ぐ

 会社の社長はその親族が引き継がなければいけないという決まりはありません。

 社長の親族に後継者として適任者がいない場合やそもそも社長の親族がまったく会社に関わっていない場合、会社の従業員や役員が、会社を引き継ぐを場合もあります。

会社の関係者以外に引き継いでもらう

 会社の事業や財産に興味がある第三者に、会社を引き取ってもらうという選択肢です。いわゆる「M&A」といわれる方法になります。

 会社関係者以外への引継ぎとなりますので、事業をスムーズに承継させるためにも早急な対応が必要になります。

会社を解散させる

 会社の事業を継続させることや引き継ぐことができない場合は、解散を選択することになります。

 ただし、会社の資産状況によっては、任意的に解散をさせることができず、破産を選択せざるを得ないというケースもあります。

社長(代表取締役)に相続が発生し、会社を解散させる方法

解散するとの決断

 会社の社長が突然亡くなってしまった。残された家族が全く関与してこなかった会社について、どうしていいかわからず、困り果てて相談に来られることがあります。

 引き継ぐ人もいないし、そのまま解散させたいと家族は考えています。

 残された家族が会社を「解散」させることはできるのでしょうか。

 会社をそのまま存続させるか解散させるかを決めるのは、「株主」となります。具体的には、株主総会で解散を決定します。

 株式会社の場合、株主総会の特別決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要になります。有限会社の場合は、総株主の半数以上が出席し、総株主の議決権の4分の3以上の賛成となります。

 会社の株主が社長のみの場合は、その相続人(家族)が株主となりますので、解散させることに問題はありません。会社の株主に社長や家族以外の方がいる場合は、上記の解散の決議の要件を満たせるかどうかを検討することが必要になります。

株式の相続

 会社の社長が亡くなった場合、社長個人の財産は、相続人に相続されます。会社の社長が自社株を持っていれば、自社株も社長の個人財産ですので、相続の対象になります。

 まず、社長が「遺言」を残していた場合、自社株について遺言に記載されていれば、その記載通りに相続されることになります。

 遺言がない場合は、相続人全員で遺産分割をすることになります。遺産分割が成立し、自社株を取得する相続人が決まれば、その相続人が「株主」となります。

遺言による株式の相続

 会社の社長が自社株について「遺言」で引き継ぐ人を指定していた場合は、自社株はその人に相続されます。

 会社に対しては、相続(遺言)により、株主が変わったので株主名簿の記載の変更の請求をしなければいけません。会社が株券発行会社であれば、株券もあわせて提出します。

遺産分割による株式の相続

 会社の社長が自社株について「遺言」で引き継ぐ人を指定してしていない場合は、相続人全員で遺産分割協議をする必要があります。

 遺産分割により自社株を承継する相続人が決まれば、遺言の相続と同じように会社に対して、株主名簿の記載の変更の請求をしなければいけません。会社が株券発行会社であれば、株券もあわせて提出します。

株主総会決議

 株主が確定しましたら、株主総会で解散の決定を行うことになります。

 解散の決定は会社の存続に関する重要な事柄ですので、通常の決議よりも要件の厳しい「特別決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成)」が必要です。

 ただし、会社の社長が亡くなったことにより解散をする場合は、会社を代表する人がいませんので、事前に会社の代表者を決める必要があります。

 株主総会の決議により解散をする前の代表者の決定については、株主構成、役員構成により手続きが異なります。

清算人による清算事務

 株主総会で解散の決議がされると、会社は「解散の状態」になります。そのことは、「解散登記」をすることで一般に公示されます。

 「解散の状態」とは、もうその会社は新たに売り上げを上げるような営業活動はしない状態という意味で、「解散」=「消滅」ではありません。

 解散の状態になりますと、会社に残った財産や権利義務の精算など、最終的に会社に残った権利や義務を全て精算し、会社財産を0にします。これを「清算事務」といいます。

 清算事務は、解散時に選任される「清算人」が中心となって行います。具体的には、現務の結了、財産の換価、債権の取り立て等を行います。

 現務の結了とは、取引先や関係各所との様々な契約や従業員との雇用契約を解消することをいいます。

 財産の換価とは、会社の財産を金銭化することをいいます。

 債権の取り立てとは、債務者から金銭を回収することをいいます。

これらの手続き(清算事務)をこれまで関わって来なかった親族の方がするのは大変です。

 幣事務所では、「清算人就任サポート」というサービスを提供しています。実際に清算人に就任し、手続きを代行することができます。

⇒ 清算人就任サポートについてはこちら

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残余財産の分配(清算結了)

 清算事務が終わると、会社には最終的に

① プラスの財産だけ残る

② マイナスの財産だけ残る

③ 会社財産は何もない

状態になります。①の場合は、残った財産(残余財産)を株主に分配して終了です。②の場合は、マイナスの財産を誰かに引き継いでもらうか、債務免除してもらい③の状態にする必要があります。③の場合は、残余財産がありませんので、そのまま終了です。

 最終的には、「清算結了」登記をすることにより、会社の登記は閉鎖されます。閉鎖されることにより、一連の手続きは完了となります。

社長(代表取締役)に相続が発生し、会社を解散するために必要な手続き一覧

 下記の表は、一般的に会社を株主総会の決議によって解散する場合の必要な手続きの一覧です。

手続具体的な内容期限手続先
法務株主総会招集通知(解散)原則、開催日の2週間前まで株主
株主総会(解散) 会社
解散・清算人選任の登記解散日から2週間以内法務局
株主総会招集通知(財産目録等承認)原則、開催日の2週間前まで株主
株主総会(財産目録等承認) 会社
株主総会招集通知(決算報告承認)原則、開催日の2週間前まで株主
株主総会(決算報告承認) 会社
清算結了登記決算承認報告日から2週間以内法務局
清算事務会社財産の現況調査就任後遅滞なく会社
官報公告解散後遅滞なく官報販売所
債権者への個別催告解散後遅滞なく各債権者
現務の結了清算結了まで 
財産の換価清算結了まで 
債権の取立て清算結了まで 
債務の弁済清算結了まで 
残余財産の分配清算結了まで 
税務確定申告(解散事業年度)解散日の翌日から2か月以内税務署
異動届出書の提出解散登記後遅滞なく税務署

確定申告(解散事業年度)

解散日の翌日から2か月い以内都道府県税事務所
異動届出書の提出解散登記後遅滞なく都道府県税事務所
確定申告(解散事業年度)解散日の翌日から2か月以内市町村
異動届出書の提出解散登記後遅滞なく市町村
確定申告(残余財産確定事業年度)残余財産確定日の翌日から1か月以内税務署
異動届出書の提出清算結了登記後遅滞なく税務署
確定申告(残余財産確定事業年度)残余財産確定日の翌日から1か月以内都道府県税事務所
異動届出書の提出清算結了登記後遅滞なく都道府県税事務所
確定申告(残余財産確定事業年度)残余財産確定日の翌日から1か月以内市町村
異動届出書の提出清算結了登記後遅滞なく市町村
労務解雇通知解雇日の30日前まで従業員
解雇予告手当の支払い解雇の予告と同時従業員
給与の支払い退職の日から7日以内従業員
退職金の支払い規定による従業員
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届退職の翌日から5日以内年金事務所
適用事業所全喪届事実発生から5日以内年金事務所
雇用保険被保険者資格喪失届退職の翌日から10日以内公共職業安定所
雇用保険適用事業所廃止届廃止した日の翌日から10日以内公共職業安定所

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社長(代表取締役)に相続が発生し、会社を解散する場合はさらに次の手続きも必要です。

 新たに代表取締役を選任したうえで、解散手続きを進めていく場合には、解散の決議の前に代表者が変わったことの届出や各種手続きが必要になるケースもあります。

手続具体的な内容期限手続先
法務遺産分割協議特になし相続人間
株主名簿の名義書換 会社
役員選任の決議の招集通知 株主、役員
役員選任の決議 会社
役員選任の登記変更後2週間以内法務局

社長(代表取締役)の相続から、清算結了までにかかる期間

 社長(代表取締役)相続から解散手続きが完了するまでの期間の目安になります。

 簡易的に手続きが進められる場合を例とすると(役員は社長のみ、株主も社長のみの場合)、最短で約3カ月くらいで完了することになります。

 ただし、社長(代表取締役)の相続から会社を解散させる場合は、個人の相続や会社の財産状況、活動実態などで解散手続きが完了するまで時間がかかることが多いです。

社長(代表取締役)の相続により会社を解散させる場合に、まずはご用意していただきたいもの

登記事項全部証明書(登記簿謄本)

 会社は法務局で設立登記することによって作られます。法務局に登記された内容を証明してもらう書類のことを登記事項全部証明書といいます。

 こちらの書類を用意していただくことにより、御社の現在の内容を確認いたします。

 登記事項全部証明書はだれでも取得することができます。当法人で取得することも可能です。

 詳しくは、お問い合わせください。

定款

 定款とは、株式会社や社団法人など、組織活動の根本規則が記載された書面のことをいいます。こちらも会社の内容、特に清算人に関する記載を確認するためご用意していただきます。

 定款は登記事項全部証明書のように役所で取得してきてもらう書類ではなく、会社で保管していただく書類です。会社の設立が古いと紛失していることも少なくありません。

 株式会社や有限会社などは、会社設立時に公証役場で認証手続をしていますので、公証役場に保管されています。ただし、保存期間の関係で古い会社だと保存されていないこともあります。

 定款を紛失していて用意できない場合でも、登記事項全部証明書やお客様に対する聞き取りなどにより当法人で復元いたします。

 定款を紛失している場合もお気軽にご相談ください。

直近の決算書

 決算書とは、企業が一定期間の経営成績や財務状況をまとめた財務報告書のことをいいます。

 解散を進めていくために、清算事務の内容の確認や、解散時の財産目録を作成するうえでの重要な資料にもなります。

 まったく作成していない場合や亡くなられた社長が管理していて、存在についても不明ということがよくあります。税務署に控えが残っていることもありますが、お手元にない場合でも対応いたしますので、お気軽にご相談ください。

遺産分割協議 など

 遺産分割協議書とは、社長(代表取締役)に相続が発生し、相続人間で故人の財産をどのように分けるかを決めた内容の書類のことをいいます。

 自社株について、承継先が決まっている場合(遺産分割協議書や遺言書など)は、その確認のためご用意ください。

社長(代表取締役)の相続により会社を解散させる場合に、かかる費用

 解散の手続きにおいてかかる費用の一覧になります。

 下記以外にも、会社の活動状況によって、通常かかってくる税金や従業員への給料などは必要になります。

 また解散や相続などの手続きを専門家に代行する場合は、専門家に支払う報酬も発生します。

手続費用の種類費用の目安概要
法務戸籍謄本等取得費用数千円社長の出生から死亡までを記載のある戸(除)籍謄本など

印鑑証明書取得費用

300円から500円ほど全相続人
登録免許税(役員変更分)1万円(資本金1億円超なら3万円)申請時に法務局に収める税金
登録免許税(解散分)3万円同上
登録免許税(清算人選任分)9000円同上
登録免許税(清算結了分)2000円同上
清算事務官報掲載料約40000円官報販売所に支払う費用
個別催告の郵送代数千円から各債権者へ個別催告を送付する実費

社長の相続のサポートサービス

安心してお任せください!

 当法人では、社長に相続が発生したあとの手続きについてトータルでサポートするサービスを提供しています。

 「社長の相続フルサポートプラン」では、会社の解散だけでなく、社長個人の相続に関する手続きについてもサポートいたします。

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 オーナー社長の相続は、一般の方の相続よりも複雑で、しなければいけない手続きも多いので、是非専門家にご相談ください。

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各種会社(法人)の解散

 株式会社とは、株主から委任を受けた経営者が事業を行い、利益を株主に配当する会社のこと。株主は出資した限度で責任を負います。

 有限会社とは、以前設立が認められていた形態で有限会社法を根拠に設立させた会社のこと。現在は設立できません。

 合同会社とは、原則として出資者と経営者が同じで、所有と経営が一体化している会社のこと。出資者は株式会社と同様出資した限度で責任を負います。

 合資会社とは、有限責任社員と無限責任社員の2種類の社員が存在する会社のこと。

 合名会社とは、無限責任社員のみによって構成される会社のこと。社員全員が会社債務について直接無限の責任を負います。

 一般社団法人とは、人が集まった組織体で、剰余金の配当を行うことを目的としない法人のこと。

 一般財団法人とは、財産の集まりに対して法人格を与えられた団体のこと。一般社団法人と同じく剰余金の配当を目的としません。

 特定非営利活動法人とは、ボランティア活動などを行う団体で法人格が付与された法人のこと。

 医療法人とは、病院、医院や歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設することを目的として設立された法人のこと。

 宗教法人とは、教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを目的とした団体のこと。都道府県知事若しくは文部科学大臣の認証が必要です。

 学校法人とは、私立学校の設置を目的として設立される法人のこと。都道府県知事若しくは文部科学大臣の認可が必要です。

 社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法の定めるところにより設立された法人のこと。

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