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曾祖父の会社名義の土地が残っていて売れない|社員全員が死亡した古い合名会社を整理するには?

 「親が住んでいる土地を将来すべて管理するのは難しいので、一部を残して売却したい」そう考えて土地の登記を確認したところ、土地の半分以上が、昔の会社名義のままになっていた。

しかも、その会社は曾祖父の時代に設立された「合名会社」。会社は何十年も営業しておらず、登記されている社員も全員亡くなっている・・・。

このようなケースでは、「もう活動していない会社だから、そのまま相続人名義に変更できるのでは?」と思われるかもしれません。

しかし、会社名義の不動産は、会社の社員や代表者が亡くなったからといって、当然にその家族の所有になるわけではありません。

今回は、実際に当事務所に寄せられたご相談をもとに、古い合名会社と会社名義不動産を整理する際のポイントを解説します。

 

実際にあったご相談

ご相談者のご両親は、現在、比較的広い土地に住んでいます。

将来、ご相談者の世代がこの土地を引き継ぐことになりますが、「これだけ広い土地を自分たちで管理していくのは難しい」と考え、最低限必要な土地だけを残して、残りを売却したいと考えていました。

ところが、不動産の登記を確認すると問題が判明しました。土地の半分以上が、個人ではなく会社名義だったのです。

さらに、会社について調べてみると、

 ・昭和6年設立の合名会社
 ・曾祖父の時代に作られた会社
 ・すでに20年以上営業活動をしていない
 ・登記上の社員は3名
 ・その3名は全員死亡
 ・会社名義の不動産が現在も残っている

という状態でした。ご相談者の本当の目的は、

「合名会社を解散したい」ことではありません。本当の目的は、

「親の土地を次世代は引き継ぐ前に整理して、不要な部分を売却できる状態にしたい」ということです。

そのために何十年も前から残っている会社を整理する必要が出てきたのです。
 

合名会社とは?

合名会社は「持分会社」に一種です。

株式会社とは会社の仕組みが異なり、合名会社では原則として社員が会社債務について無限責任を負います。

また会社法では社員の死亡は原則として退社事由ですが、定款に、死亡した社員の相続人等が持分を継承する旨の定めが置かれている場合には扱いが異なります。また、会社法施行前と後での扱いも異なります。

したがって、「登記に載っている社員3人が全員亡くなっている」という事実だけを見て、「現在は社員がいない」「相続人が社員になっている」「もう会社はなくなっている」と即断することはできません。

古い合名会社ほど、会社の沿革や定款、社員が死亡した時期などを確認する必要があります。

 

20年以上営業していなければ会社は消えている?

ここも誤解されやすいところです。

営業していないことと、法人が法的に整理されていることは別問題です

「20年前に商売をやめた」
「税務署に休業の届出をした」
「会社の銀行口座も使っていない」という事情だけで、当然に会社名義の不動産が家族のものになるわけではありません。

今回のように、何十年も前の会社名義で不動産登記が残っているのであれば、その不動産を処分するためにも、会社の現在の法的状態を調査する必要があります。

会社名義の土地は家族だけで売却できない

ここが今回の問題の中心です。

土地の登記名義人が「〇〇合名会社」なのであれば、その不動産は原則として会社の財産です。

例えば曾祖父がその会社を作ったとしても、「曾祖父の会社だから、曾祖父の相続人が土地を相続する」と単純には考えられません。

個人の財産と会社の財産は分けて考える必要があります。そのため、

「会社の社員は全員亡くなっている」「曾祖父の会社だから現在の家族で話はまとまっている」というだけで、会社名義の土地を家族個人の判断で売却することはできません。

社員全員が死亡した古い合名会社を整理するには?

では、今回のような会社をどう整理するのでしょうか。

ポイントは、いきなり解散登記を申請しようとしないことです。

最初に「現在、この会社がどういう状態なのか」を復元していきます。

1.会社の登記記録を確認する

まず合名会社の商業登記を確認します。

現在の登記事項だけではなく、必要に応じて過去の登記記録まで調査します。

例えば、

 ・いつ設立されたのか
 ・誰が社員だったのか
 ・社員の加入・退社
 ・本店所在地
 ・代表社員
 ・解散登記の有無
 ・その他の変更履歴

などを確認します。法務局でも、持分会社について「社員の退社及び加入」「解散、清算結了」などの登記手続きが設けられています。

2.定款を確認する

次に非常に重要なのが定款です。特に確認したいのが、社員が死亡した場合の持分の承継について、どのように定められているかです。

会社法上、社員の死亡は原則として退社事由ですが、相続人等が持分を承継して社員となる旨を定款で定めることができます。

したがって、社員全員が亡くなっている案件では、定款の内容がその後の処理に大きく影響する可能性があります。

ただ、昭和初期に設立された会社では、「定款がどこにあるのか分からない」というケースも珍しくありません。

その場合も、残っている会社資料や登記記録などから、一つずつ状況を確認していくことになります。

3.社員が亡くなった時期を確認する

古い会社では「誰が亡くなったか」だけでなく、「いつ亡くなったのか」も重要です。

昭和6年に設立された会社であれば、会社の歴史は90年以上あります。社員の死亡時期によっては、当時の法制度との関係も確認しなければならない場合があります。

そのため、「現在の会社法だけを見れば終わり」とは限りません。

戸籍等によって社員の死亡時期や相続関係を確認し、会社の登記記録と時系列で照合していきます。

4.会社名義不動産を調査する

次に、不動産側も調査します。

確認するのは、

 ・どの土地が会社名義なのか
 ・いつ会社が取得したのか
 ・抵当権などが残っていないか
 ・土地の一部だけ売却するのか
 ・誰が現在利用しているのか
 ・売却前にどのような整理が必要か

などです。会社の登記だけではなく、「最終的にこの不動産をどうしたいのか」から逆算して会社の整理方法を考えることが重要です。

5.会社の資産・負債を確認する

不動産だけを見て会社を清算することもできません。

会社に

 ・預貯金
 ・未収金
 ・借入金
 ・未払金
 ・税金
 ・その他の不動産

などが残っていないか確認します。

何十年も活動していない会社の場合、現在の家族が会社の財産状況をまったく把握していないこともあります、

ここも可能な範囲で資料を集めて整理していきます。

6.解散・清算と不動産処分設計を検討する

会社の状態把握できたら、どのような手順で会社を整理し、不動産を処分するか検討します。

合名会社・合資会社については、合同会社とは異なり、会社法上、一定の場合に定款または総社員の同意によって財産の処分方法を定める仕組みも設けられています。

ただし、今回のように社員が全員死亡している古い会社では、通常の会社解散案件と同じ手順で処理できるとは限りません。

会社の沿革、定款、社員の死亡・相続関係、不動産、資産負債などを踏まえて、個別に手続を組み立てる必要があります。

「会社を解散すれば土地が家族名義になる」わけではない

ここも重要です。

会社を解散しただけで、会社名義の土地が自動的に相続人名義になるわけではありません。

会社を解散した後には、残っている財産や債務を整理する「清算」という段階があります。

法務局でも、持分会社について「解散」と「清算結了」の登記手続が案内されています。

会社名義不動産をどう処分するのかについても、清算手続全体の中で検討する必要があります。

そのため、「会社を消してから土地を考える」のではなく、

「最終的に土地をどうしたいか」から逆算して会社の整理を考えることが重要です。

古い会社ほど「資料がないから無理」と諦めない

今回のようなご相談でよくあるのが、

「曾祖父の会社なので何も分かりません」

「定款なんて見たことがありません」

「社員だった人は全員亡くなっています」

というケースです。

しかし、最初からすべての資料が揃っている必要はありません。

まず、会社の登記不動産の登記戸籍・相続関係残っている会社資料

などから、会社の歴史を一つずつ整理します。

90年以上前に作られた会社だからこそ、現在の登記だけを見るのではなく、会社が現在の状態になった経緯を調べることが重要です。

親から相続する前に整理するという選択肢

今回の相談でもう一つ重要なのが、まだご両親がその土地に住んでいる段階で相談されているという点です。

これは非常に大きな意味があります。

相続が発生してから、「土地を売ろう」

「会社名義になっている」「会社の社員は全員死亡している」「会社の資料がない」と判明すると、相続手続きと会社整理が同時進行になります。さらに、次の世代へ相続が発生すれば、関係者が増える可能性もあります。

したがって、「将来、この土地をどうするか」が見えているのであれば、相続が発生する前から会社名義不動産の問題を調査しておくことは大きなメリットがあります。

まとめ|昔の会社名義の土地を「会社」と「不動産」一緒に整理する

 今回のケースは

 ・昭和6年設立の合名会社
 ・20年以上営業していない
 ・登記上の社員3名が全員死亡
 ・会社名義の土地が残っている
 ・親から引き継ぐ前に土地を整理したい
 ・不要な土地を売却したい

というご相談でした。

こうした案件では、「合名会社を解散する」だけを目的にしないことが重要です。最終目的は、会社を整理したうえで、会社名義の不動産を適切に処分し、次の世代に問題を残さないことだからです。

「曾祖父の会社なので何も分からない」「会社の社員は全員亡くなっている」「昔の会社名義の土地が残っていて売れない」という段階でも構いません。

まずは、会社登記・不動産登記・定款・社員の相続関係などを確認し、どこから手を付ければよいのかを整理することから始めます。
 

 

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