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幼稚園は10年以上前に閉園したものの、学校法人の解散・清算が終わらず法人だけ残っている。このような場合、何から手を付ければよいのでしょうか。高齢の理事長や役員、寄附行為、資産・負債、不動産、所轄庁への解散認可申請、清算手続まで、学校法人を整理する際のポイントを司法書士が解説します。

「母が理事長をしていた幼稚園は、もう10年以上前に閉園しています。でも、学校法人の解散手続きがうまく進まず、そのままになっています。母もかなり高齢です。母が生きているうちに、なんとか学校法人まできちんと終わらせたいのですが・・・。」
実際に、このようなご相談があります。幼稚園自体はすでに閉園し、園児もいない。園舎も以前のようには使われていない。しかし、学校法人そのものは今も残っている。そして、理事長や理事、評議員など法人運営に関わってきた人たちも高齢になっている。
こうした状態になると、ご家族としては、「幼稚園はもうないのだから、学校法人も自然になくなっているのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、幼稚園を閉園したことと、学校法人が解散・清算されて法人格がなくなることは別の問題です。学校法人を終了させるには、学校法人特有の解散・清算手続きを進める必要があります。
この記事では、長期間前に幼稚園を閉園したものの学校法人だけが残っているケースについて、どのように整理を進めればよいのかを解説します。
まず最も重要なのは、「閉園」と「学校法人の解散」は別の手続きということです。
例えば、
・園児募集を終了した
・最後の園児が卒園した
・幼稚園としての活動を終了した
・園舎を使用しなくなった
・教職員もいなくなった
という状態になったとしても、それだけで学校法人が自動的に消滅するわけではありません。
学校法人を法的に終了させるためには、私立学校法に基づいて解散・清算手続きを進める必要があります。
現在の私立学校法では、学校法人の解散事由として理事会の決議による決定などが定められており、理事会の決議による解散や「目的たる事業の成功の不能」による解散については、所轄庁の認可を受けなければ効力を生じません。
したがって、「幼稚園を閉めたから法人も終わっている」とは考えない方が良いでしょう。
株式会社であれば、株主総会で解散を決議し、法務局へ解散登記をして清算手続を進めるのが典型的です。学校法人はこれとは異なります。
学校法人には、
・理事会
・評議員会
・所轄庁
・寄附行為
など、学校法人特有の制度があります。
そのため、「理事長が学校を閉めると決めた」「家族全員が法人をなくすことに賛成している」というだけでは、手続きが完結するとは限りません。
まず、現在の学校法人がどのような状態にあるのかを確認し、そのうえで必要な法人内部の手続き、所轄庁との手続き、登記、清算を組み立てていく必要があります。

「閉園してから10年以上も経っています」「長期間放置してしまいました」という相談もあります。
結論から言えば、長期間経過しているからという理由だけで、整理できなくなるわけではありません。
ただし、時間が経っているほど確認事項が増える傾向があります。
例えば、
・当時の寄附行為が見つからない
・理事や評議員が亡くなっている
・役員の任期が切れている
・登記が長年更新されていない
・学校法人名義の土地・建物が残っている
・預金口座が残っている
・負債や未払金の有無が分からない
・過去の会計資料が揃っていない
などです。つまり、10年以上経っているから解散できないのではなく、10年以上経っているからこそ、まず現状を復元する作業が重要になります。

今回のご相談で特に重要なのが、理事長であるお母様がかなり高齢になっているという点です。
幼稚園を閉園した当時は、「そのうち学校法人も整理しよう」と思っていたかもしれません。しかし、そのまま数年、10年と経過すると、理事長だけでなく、
・理事
・監事
・評議員
・元職員
・法人の事情を知っている関係者
も高齢になります。そして、その方たちが亡くなったり、意思表示が難しい状態になったりすると、法人の過去を把握している人がどんどん少なくなります。そのため、「親が生きているうちに学校法人を整理したい」という判断は非常に重要です。

では、具体的に何を調べるのでしょうか。
まずは次のような事項を整理します。
1.現在の法人登記
最初に法務局の法人登記を確認します。
例えば、
・法人の正式名称
・主たる事務所
・理事長
・解散登記の有無
・過去の登記状況
などです。「幼稚園は閉園したが、学校法人の登記はどうなっているのか」をまず確認します。
2.寄附行為
株式会社の定款に相当するのが、学校法人の寄附行為です。
寄附行為には、
・法人の目的
・理事・監事・評議員
・意思決定方法
・解散
・残余財産の帰属
など、学校法人の根幹となる事項が定められています。
特に解散・清算では、残余財産をどうするのかという点でも寄附行為が重要になります。
学校法人の残余財産は、一般の営利法人のように理事長やその家族へ自由に分配できるものではありません。文部科学省も、解散した学校法人の残余財産は、寄附行為の定めに従い学校法人その他教育事業を行う者へ帰属し、それでも処分されない財産は国庫に帰属する仕組みを示しています。
3.現在の役員・評議員
次に、
・現在の理事は誰か
・監事は誰か
・評議員は誰か
・生存しているか
・任期はどうなっているか
・現在も法人手続に関与できる状態か
を確認します。
長期間活動していない学校法人では、登記や寄附行為上の体制と、現実の状態が一致していないことがあります。ここを整理しないまま解散手続きを進めようとすると、途中で止まる可能性があります。

学校法人の解散で株式会社と大きく違うのが、所轄庁との手続きです。
現行の私立学校法では、理事会の決議による解散や目的たる事業の成功の不能による解散は、所轄庁の認可を受けなければ効力を生じません。
したがって、「法人内部で解散を決めて、すぐ法務局へ解散登記」という単純な流れではありません。
どのような理由で学校法人を解散するのか、法人の資産・負債はどうなっているのか、残余財産をどうするのかなどを整理しながら、所轄庁との手続きを進めていく必要があります。
幼稚園だけを設置している学校法人の場合は、通常、都道府県が所轄庁となるケースが中心ですが、実際の所轄庁は法人ごとに確認します。

ここも非常に重要です。
解散=学校法人が完全になくなるではありません。解散後には、清算が必要です。
文部科学省が示している手続例でも、
解散認可
↓
解散登記
↓
解散登記完了の届出
↓
解散公告
↓
清算手続
↓
清算結了登記
↓
清算結了の届出
という流れになっています。つまり、解散は法人を終わらせるためのスタート地点です。

清算段階では、法人に残っている財産や債務を整理します。
例えば、
・預貯金
・園舎
・土地
・備品
・未収金
・借入金
・未払金
・税金
・その他の債務
などです。債権者への対応を行い、債務を弁済し、最終的に残余財産を処理していきます。したがって、「もう園児はいないから何もすることがない」とは限りません。特に園舎や土地が学校法人名義で残っている場合、不動産の扱いは非常に重要な論点になります。

閉園後の学校法人で大きな問題になりやすいのが不動産です。例えば、
・幼稚園の土地
・園舎
・駐車場
・職員住宅
・その他の法人所有地
などです。これらが学校法人名義であれば、「理事長だった母の土地だから、その子供が相続する」ということにはなりません。
学校法人と理事長個人は別の主体です。
そのため、学校法人名義の財産については、学校法人の解散・清算手続の中で適切に処理する必要があります。

ここも相談者が誤解しやすいポイントです。学校法人は株式会社とは性質が異なります。清算後に残った財産を「理事長が長年経営してきたのだから、理事長や家族が受け取る」という形で自由に分配することはできません。残余財産の帰属については、私立学校法や寄附行為に従う必要があります。文部科学省も、学校法人の残余財産は寄附行為で定められた教育事業を行う者等に帰属し、処分されない財産は国庫帰属となる仕組みを示しています。
この点は、解散を検討する早い段階で確認しておくことが重要です。
学校法人が解散すると、清算を担当する清算人が必要になります。具体的に誰が清算人になるかについては、
・解散理由
・寄附行為
・現在の理事の状況
などを確認する必要があります。
したがって、「高齢の理事長が必ず最後まで全部やらなければならない」と決めつけるのではなく、個別の法人の状況を確認したうえで清算体制を検討することが重要です。

今回のようなケースで最も重要なのは、すぐに解散認可申請書を作ることではありません。
まず、「この学校法人は今どういう状態なのか」を整理することです。
具体的には、
1.法人登記を取得する
2.寄附行為を確認する
3.理事・監事・評議員を確認する
4.幼稚園を閉園した経緯を確認する
5.所轄庁との過去のやり取りを確認する
6.法人名義の土地・建物を確認する
7.預貯金等の財産を確認する
8.借入れ・未払金等を確認する
9.会計・税務の状態を確認する
10.解散から清算結了までの手順を設計する
という流れです。特に長期間止まっている案件では、「なぜ当時の解散手続きが止まったのか」も確認した方がよいでしょう。
そこに今回の手続きを進めるうえでの問題点が隠れている可能性があるからです。

今回の相談者の言葉で最も重要なのは、「母がかなり高齢で、生きているうちになんとか終わらせたい」という部分だと思います。
学校法人の整理を先延ばしにすると、理事長本人が亡くなった後、ご家族が、「学校法人が残っていることは分かるけれど、何をしていたのか全く分からない」という状態になる可能性があります。
さらに、
・昔の書類が見つからない
・法人の預金が分からない
・不動産の経緯が分からない
・所轄庁とのやり取りが分からない
・他の役員も亡くなっている
となれば、状況確認はさらに難しくなります。だからこそ、法人の事情を知っている人が元気なうちに整理を始めることには大きな意味があります。
長期間放置されている学校法人では、「寄附行為がどこにあるか分からない」「昔の議事録がありません」「役員が誰だったかもよく分かりません」ということもあります。しかし、資料が全部揃ってから相談しなければならないわけではありません。まず手元にある、
・法人の登記
・寄附行為
・不動産の登記
・通帳
・決算書
・昔の議事録
・所轄庁から届いた書類
・幼稚園閉園当時の資料
などを確認し、足りないものを整理していきます。「何が分からないのかも分からない」という段階から始めても構いません。
学校法人の解散・清算では、
・法人登記
・所轄庁への申請・届出
・不動産
・会計
・税務
・債権債務
など複数分野が関係します。そのため、案件によっては、
・司法書士
・行政書士
・税理士
・弁護士
・不動産会社
などとの連携が必要になる場合があります。重要なのは、「誰に何を依頼すればいいか分からない」という状態を整理することです。

幼稚園を10年以上前に閉園していても、学校法人の解散・清算が終わっていなければ、法人そのものは残っている可能性があります。
特に、
・理事長が高齢
・役員も高齢化している
・長期間活動していない
・学校法人名義の不動産がある
・寄附行為や資料が見つからない
・解散手続きが途中で止まっている
というケースでは、早めに状況を整理することをおすすめします。学校法人の解散では、「解散登記をすれば終了」ではありません。
所轄庁との手続き、解散登記、公告、財産・債務の整理、残余財産の処理、清算結了登記、清算結了届まで、一連の手続きがあります。文部科学省も解散後に清算手続きが必要であることを明確に示しています。
そして何より、「母が元気なうちに全部終わらせておきたい」と思ったときが、整理を始めるタイミングです。
司法書士法人 One Successionでは、「幼稚園はすでに閉園したのに、学校法人だけ残っている」といった法人整理についてもご相談いただけます。
・10年以上前に閉園した
・理事長が高齢
・他の役員も高齢・死亡している
・何年も解散手続きが止まっている
・学校法人名義の不動産が残っている
・何から始めればよいか分からない
このような状態でも構いません。まず現在の登記、寄附行為、役員、財産、所轄庁との過去の手続きなどを確認して、「学校法人をきちんと終わらせるために、これから何をすればいいのか」を整理していきます。
「資料が揃ってから」ではなく、「どうしていいか分からない」段階からご相談ください。

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